金重陶陽の水指
五橋文庫では、今年最初の展示は備前焼で始まりました。海揚りを含めてほとんどが桃山の備前焼の展示ですが、備前焼の歴史についても簡単に展示しています。
縄文、弥生と日本のやきものが始まり、5世紀には朝鮮半島から伝わった焼物から須恵器を造るようになり、備前焼が生まれました。岡山県の伊部では室町時代に大きな壺や甕を作り、安土桃山時代には茶の湯の世界に花を咲かせていきました。低温で長い時間をかけて焼き上げた備前は硬く焼き締まり、水も腐らず、落としても割れないと言われ、沢山の日用雑器となりました。江戸時代になると伊万里や九谷などの色鮮やかな陶磁器が出回り、次第に備前焼は人気を失っていきました。しかし、陶工たちは唐物かと見間違うような細工物をつくる新たな世界を生みだしています。
更に時は流れて明治になると、「備前焼中興の祖」と言われる金重陶陽が現れ、備前焼の復興をさせたのでした。備前焼の陶工として初めての人間国宝となり、その後も多くの人間国宝があとに続いています。その陶陽の水指と弟・素山の盃も並んでいます。
金重陶陽・素山
「六古窯のひとつ、備前焼の展示をまさか岩国で見れるとは・・」と岡山から来られたご夫婦からお褒めの言葉を頂きました。桃山の古備前を中心に展示した中から、現代の金重陶陽と素山の水指と盃を見つけられ、大いに喜んでいただきました。日本が誇りに思うやきものの世界は、これからも長く引き継がれていくと思います。